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Foxter & Max フォクスターとマックス

ウクライナ映画 (2019)

ウクライナ版ロボット映画だが、そこに登場するロボットが、何と ナノ・ロボット。2020年10月26日~2021年1月15日までオンライン展示が行われていた国際ナノテクノロジー総合展・技術会議の内容からも分かるように、この分野は ごくごく初歩の研究段階で、ナノ・ロボットなど遠い将来の夢でしかない。アメリカ映画では『ターミネーター:新起動/ジェニシス』(2015)や『ブラックパンサー』(2018)で、形を自由に変えられるロボットが登場するが、それは過激な戦闘シーンの一部として登場するだけで、この映画のナノ・ロボットように粒状体が “主人” の意志に沿って犬になるという、“家庭的” な雰囲気の中での出現とは大幅に異なっている。そういう意味では、子供映画に革新をもたらしたと高く評価できるし、本国のウクライナ・アカデミー賞でも最優秀視覚効果賞を受けている。主役のマックス役の見栄えがもう少し良かったら、観ていて楽しかったろう。相手役のソーニャがすごく可愛い女の子だけに、違和感すら抱いてしまう。

映画は、2つに分かれて進む。1つは、主人公であるマックスが漫画オタクで、虐めの対象になっている冴えない少年だという現実を見せる場面。もう1つはGearz Roboticsという会社で、若手女性研究者のアレックス〔男性のような名前だが、女性〕が研究を進めてきたナノ・ロボットが実用段階に達し、それを企業スパイから聞いたMiron Corpというヤクザな会社のボスが、セキュリティシステムへの侵入のプロのゲコにナノ・ロボットを盗み出すよう命じる。ゲコが、警備陣に追いかけられ、街路で争いになった時、ナノ・ロボットの入った円筒ケースが高架橋の下に落ちてしまう。その時、橋の下には、ウォールペインティングをしようとやってきたマックスがいた。円筒ケースをスプレーだと勘違いしたマックスは、それを使って自分の考えたロボット犬の絵を描く。しかし、それは、絵ではなく、絵の姿で壁に貼り付いたナノ・ロボットだった。マックスが帰宅しかけると、絵は、壁から離れて、立体的なロボット犬になる。そこからは、マックスとロボット犬の関係が映画の中心となる。最初、ロボット犬は、マックスに気付かれないように マックスの危機を救い、マックスの前に姿を現して驚かした後は、普通の犬の形に変身し、フォクスターという名前をもらう。フォクスターは、マックスに、彼が憧れているソーニャの前で派手なパフォーマンスをさせて、関心を引かせるなど、かけがえのない友となって行く。そんな時、父の仕事の都合で、引っ越しの話が急に降って湧く。マックスは、ソーニャと別れたくないので、大反対して アパートを飛び出すが、追いかけていった父が車に跳ねられてしまう。マックスは、父を助けなかったとフォクスターを責めるが、父が怪我で済んだと分かると、フォクスターと仲直りし、人間の命の重要さをフォクスターに教える。その直後、心配して病院に来たソーニャと一緒に、違法駐車したスポーツカーに乗り込んだマックスは、フォクスターが隠れて運転してくれているので、ソーニャの前でいい格好を見せるが、それもほんの束の間。後を追ってきた、ボス、アレックス、ゲコに加え、誤って発射されたナノ粒子の不活性化ビームのお陰で、フォクスターの機能は低下。マックスとソーニャは、ボスの元に連行される。そこから、如何に大団円を迎えるか。ハラハラドキドキの活劇が観る者を楽しませてくれる。

12歳のマックス役のBohdan Koziiは、2005年生まれ。映画の撮影が2018年とすれば撮影時は13歳かもしれない。詳しい情報は何もない。映画出演はこれが初めて。次回作は未定。

あらすじ

朝、マックスは母に起こされる。「まだ寝てるの? もう7時よ」。ベッドから体を起こしたマックスが最初に言った言葉は、「犬を飼っちゃダメ?」。母は、「部屋の中、見たことある? このゴチャゴチャに、さらに犬まで加えたいの?」と訊く。その時、絨毯の上にマックスが描いた犬のスケッチが映る(1枚目の写真)。後に登場するロボット犬フォクスターの原型だ。「そのうち、いいでしょ?」。「ダメって言ったでしょ。自分の部屋の片づけすらできないくせに」(2枚目の写真)〔それほどひどいとは思えないが…〕。マックスの家庭は、父も母も共働き。母は、朝から仕事の指示の電話をかけているし、父は、「お早う」と声を掛けると、すぐに出勤。

次に映るのが片側3車線で、幅広い歩道のある計画的な広幅員道路に面した「腰巻きビル」。“腰巻き” とは、例えば、旧東京中央郵便局の外壁を残し、その中央に聳えるように造られた総ガラス張りのJPタワー。それと似たビルが映る。グーグルのストリートビューで捜しても、そんな高層ビルはキーウ〔キエフはロシア語発音〕の街には存在しないので、CG合成のビルだ。カメラは、その中で行われている説明会に移行する。そこでは、20代半ばの女性アレックスが、会社の資金で行っている研究について、首脳陣に説明している。「ご存じのように、私のナノ・ロボットは、どんな形にも命令一つで姿を変えることができます。それだけでなく、絶えず進化しているウイルスをブロック〔現在の変異型コロナウィルスも?〕、ハッカーに対抗するための有機ファイアウォールを作成、極秘情報を含むデータベースの保護もできます。私のナノボットほど信頼性が高く効率的なものはありません」。この間に、空中に漂う粒子状の物質(写真)が、あっという間に、豹や人工衛星に変化する。それを聞いた社長(?)は、「実地試験は、いつ始めますか?」と尋ねる。「数日で準備が整います。データはすぐに得られでしょう」。社長は、「あなたの研究費は継続されます」とだけ言い、部下を連れて去って行く〔賞賛の言葉もないとは…?〕

マックスは、当校途中に陸橋の手すりにもたれ、下の道路の壁面に若者達がスプレーで好きなように絵を描いているのを羨ましそうに見ている(1枚目の写真、この場所が、後で関係する)。こんな時間潰しをしたお陰で、学校の授業は既に始まっている。マックスは、急ぎもせずに廊下を歩くと、自分の教室のドアを開け、教師に、「お早うございます。入っていいですか?」と尋ねる(2枚目の写真)。「いいわよ。ちゃんと言い得できるんでしょうね?」。マックスは、取り敢えず、中央の通路を歩いて自分の席に向かう。すると、虐めっ子ダンの足が伸び、マックスは、それにつまづき(3枚目の写真、矢印)、派手に転倒する。一斉に笑い声が起きるが、マックスの1つ後ろの席の女の子ソーニャだけは、可哀想に思って見ている。足を出したダンは、「どこ見て歩いてるんだ、バカ」と、笑いながらとどめを刺す。教師は、「2人とも、やめなさい」と言っただけで、あからさまな虐めを注意すらしないが、遅刻の理由を言わなくても済む。

次のシーンでは、入口に「ミロン社」と表示されたガラス張りの円筒型ビルが映る。こちらもCGだろう。そこに1人の太った男が入って行く。その男は、社長に会うと、アレックスの開発したナノ・ロボットの情報を暴露する。「何にでも変形できる複雑なナノテクノロジー。究極のハッカー。それがあるのです!」。アメリカ映画のロシアン・マフィアといえば坊主頭が多いようだが、この社長もその典型。如何にも悪の帝王といった感じ。「それが、わしに何の関係がある?」(写真)。「セキュリティシステムに侵入できます。銀行や株式相場にも侵入できます」。これを聞いたボスは、「ゲコを呼べ」と部下に命じる。

学校での演劇練習。演目はウクライナの女流作家Леся Українкаによる『Лісова пісня(森の歌)』(1911)という3幕の詩的な劇。良くは分からないが、舞台に立ったソーニャは、森を想わせる冠をかぶっているので、森の王女のМавка役か? マックスは、舞台の袖に隠れて、憧れのソーニャの絵を描いている(1枚目の写真)。すると、虐めっ子ダンの一味に舞台の床下に引き込まれる。ダンは、スケッチブックに描かれたソーニャを見て、「お前、気が変になったのか? 俺のガールフレンドなんか描きやがって!」と言うと、ソーニャを描いたページを破る。「何様のつもりだ? こんなコトしたらどうなるか教えてやる」。その言葉で、手下が花火に火を点けてマックスに持たせる(2枚目の写真、矢印は導火線が火を噴く花火)。3人は穴から袖に抜け出し、ダンは、途中で破ったスケッチを落としていく。そして、床下で花火がボン! 穴から煙が出る。舞台監督をしている教師は、「一体何が起きた?」と言い、そこにマックスが這い上がってくる。「スコーリック〔マックスの姓〕! 学校に火を点ける気か? 校長室に行け!」と叱る。一方、床に落ちた丸めた紙を開いて見てみたソーニャは、自分が素敵に描かれているのでニッコリ(3枚目の写真、矢印)。

一方、ボスに呼ばれたゲコは、ナノ・ロボットの研究室の詳しい平面図を見て〔この種の映画で いつも疑問に思うことだが、こんな物をどうやって入手したのだろう?〕、「研究室には簡単に忍び込めます。でも、これは5センチの鋼板を使った最新式の耐火金庫で、高度な警報システムを備えています。このレベルになると、盗める保証はできません」と、弱気な発言(1枚目の写真)。ボスは、「お前は、なんで わしと組んで働いとる?」と訊く。「俺がベストだから」。「違う。わしがそう思ったからだ。だから、行って、ナノ・ロボットを持って来い」と命令される。次のシーンでは、ゲコが両手と両足に特殊な装置を付け、ガラス張りの高層ビルを登る(2枚目の写真、2つの矢印は、掌の部分に白色LEDの付いたハイテクグローブ)。研究所のあるフロアの窓を、回転式のガラス切りで円形に切り抜き、吸盤で吸着して取ると、切り抜いた部分に引っ掛け、中に侵入する。そして、天井に両手両足で張り付いて中に進む(3枚目の写真、2つの矢印はハイテクグローブ、左端は役立たずの見張りの旧式ロボット)〔上下逆さまで撮影したのか、合成か? いずれにせよ、すごく自然でCGの出来栄えは合格点〕。そのあと、天井に付けられた赤色レーザーによる警報装置に煙スプレーを吹きかけて、レーザー光線がどこにあるかを調べるところは納得できるが、そのレーザー光線の1本を反射鏡で部屋の隅にある装置の中央に当てると、なぜか警報が切れる〔そんなことって、あり?〕。ゲコは自由に床に降り、ナノ・ロボットの金庫〔直方体ではなく円筒状〕の前にあるコンピュータ・システムに、持参した暗号解読器を吸着させる(4枚目の写真、矢印の赤い丸が解読器、その上の銀色の円盤が金庫の上端)〔コンピュータに接続もしないで、なぜ金庫のパスワードが解読できるのだろう?〕。そこに警備員が入って来る〔警備員は、レーザーが切れていることに、何故か気付かない〕。その時、解読が終わり、コンピュータが、「システム、起動します」と、音声を発する。そして、円盤の中から、ナノ・ロボットの入った円筒状のケースが、透明な筒に入れられた状態でせり上がってくる。当然、警備員もそれに気付く。ゲコは、警備員に背後から襲いかかり、ナノ・ロボットのケースを持って逃げ出す。警報が鳴り響き、数名の警備員が駆け付ける。

ゲコは、ビルの外に逃げ出すことに成功するが、2人の警備員も後を追う。彼が走っている場所は、たまたま、マックスが、当校途中に陸橋の手すりにもたれ、スプレーで描かれた絵を見ていた下の通路(1枚目の写真)。ゲコは、階段を駆け上がって陸橋を逆走する。そこで、警備員と乱闘になり、持っていた大切なナノ・ロボットの円筒ケースを、下の通路に落としてしまう(2枚目の写真、矢印は落下していくケース)。ところが、下の通路には、夜、こっそりアパートを抜け出し、壁に絵を描こうと思ってやってきたマックスがいた。スプレーは持っていないので、通路に転がっているスプレーを使おうとするが、どれも空。ところが、変わった形のスプレーらしきものが落ちていたので、何だろうと手に取ってみる(3枚目の写真)。それは、直前にゲコが落としたナノ・ロボットのケースだった〔ヘッドホンで音楽を聴きながら踊っていたので、落下音に気付かなかった/陸橋の上では、まだ乱闘が続いていて、ゲコもそれに気付かない〕

マックスがケースをいじっていると、ケースの上部が2つに割れて開き、頂部にLEDライトが点く。スプレー缶ではないことは明白なのに、マックスが壁に向かって頂部のボタンを押すと、粒子状のものが飛び出て、絵を描いていく(1枚目の写真)。普通なら、スプレー缶は一色なのに、この不思議な器具は、マックスが思い描いていた犬を、吹き付けただけで描いていってくれる(2枚目の写真)〔なぜ、異常だと思わないのだろう?〕。描き終わると、粒子が出なくなる。使い切って空になったと思ったマックスは、ケースを投げ捨てる。そこに、ゲコが着地し、大切なケースを拾う〔マックスがいじった時、頂部が2つに割れたのに、いつの間にか元に戻っている。なぜ??〕。ゲコは、犬の絵の前に立っているマックスを見て、「君が描いたのか?」と訊く(3枚目の写真)。ヘッドホンを外したマックスは、「そうだよ」と答える。「君のタグ〔tag:壁などの公共の場に描くこと〕は、すごいな」と褒める。「ありがとう」。ゲコが去ると、マックスは、壁の犬に向かって、「聞いたか? お前、すごいぞ」と笑顔で言う。

マックスが絵の前を立ち去ると、壁の中で絵が動き始め、粒子状になって壁面から外に飛び出す。粒子は再び集まり、マックスが描いた犬の立体版に変化する(1枚目の写真)。そして、階段を上がって行くマックスの後をつけて行く(2枚目の写真)。犬は、うっかり階段の手前にあった金属製のゴミ箱を倒してしまい、その音に何事かとマックスが振り向いたので、急いで透明になる(3枚目の写真、矢印は透明になっても微かに分かる犬)。マックスは、何となく怖くなって走ってアパートに向かう。一方、ゲコは意気揚々とナノ・ロボットのケースをボスに届けるが、蓋を開けても何も出てこない。「これは何だ? ロボットはどこだ?」と叱られる。さらに、ナノ・ロボットの研究室では、アレックスが盗難の状況の説明を受けている。アレックスは、ナノ・ロボットの思考形態は熟知しているので、自分で探そうと決心する。

翌朝、ゲコはオートバイを飛ばして、昨夜、ケースを拾った場所に向かう。途中で、キーウの中央を流れるドニエプル川に差しかかる(1枚目の写真)。左端に見える金色の屋根の教会は、Церква Миколи Чудотворця(ウクライナ正教会)。岸辺ではなく川の中に聳え立つ不思議な建物だ。正面に見える巨大なアーチは、建設中のПодільський мостовий перехід(Podilskyi鉄道・道路併用橋)で完成は2021年。2枚目の写真は、ほぼ同じ場所からの、グーグルのストリートビューの画像。架設中の橋がほぼ同じなので、結構最新の画像が使われていることが分かる。昨夜の場所まで行ってゲコが真っ先に気付いたのは、子供の描いた絵が消え、犬の形だけが白く残っていること(3枚目の写真)。「ここで 何が起きたんだ?」。

一方、マックスは学校に向かう。夜中の間、アパートの外に隠れていた犬は、透明になって後を追う。次の場面は、犬の目で見たマックス(1枚目の写真、矢印は意地悪グループのダン)。真上の数字「5.829m」は距離。英語が使われている。カメラアングルが変わり、ダンが、木の長いベンチにひっそりと座っているマックス目がけて寄ってくると、膝の上に置いたバッグをひったくり(2枚目の写真)、中身を地面に捨てた後で、投げて返す。そして、「この 出来損ない」と侮辱する。ダンと他の3人は、意気揚々とマックスから去って行く。マックスは、何も言わずに、地面に落ちた物を拾ってバッグに戻す。すると、ペンケースがマックスの目の前で空中に浮上して行くと、今度は、水平に かなりのスピードでダンの後頭部に移動・衝突する。ダンは、当然、マックスが仕返しにぶつけたと思い込む。怖くなったマックスは、殴られても壊れないよう、メガネを仕舞う。ダンは、3人を引き連れて戻ってくると、マックスの顔目がけてパンチを繰り出すが、マックスの背負ったバッグが勝手に引っ張られ、マックスの体が後ろに逸れたので、パンチは空振りとなり、ダンは勢い余って地面に転がる。それを見た、もう一人の敵が、マックスの胸を思い切り突くが、今度は、バッグが自動的に背中に戻り、マックスの体を 地面すれすれで、それ以上倒れないよう宙に支える(3枚目の写真)。それからの闘いは結構面白い。バッグは、マックスの様々な場所に移動し、それが武器となって、4人に対し優勢に闘う。最後は、バッグが頭に被さった敵を、マックスが頭上越しに投げ飛ばすシーン(4枚目の写真)。闘いのCGは上手なのだが、不自然なのは、2枚目と3枚目の写真から分かるように、生徒達全員が例外なくこの闘いを見ている点。それを近くで見ていたソーニャは、絵のこともあり、マックスを見直したような表情だ。

一方、研究室では、監視カメラの映像を見ながら、アレックスがゲコについて、「彼をセキュリティーコンサルタント〔強盗に対する警報システムの助言者〕に雇わないと」と呟く。そのあと、ナノ・ロボット探索に出かけるに当たり、アタッシュケースを持ち出す。中に入っているのは、拳銃の形をした特殊な装置。「それ、何ですか?」と年上の部下に訊かれ、「パルス・ニュートライザー〔波動無力化装置〕よ。電磁波を検出し、あらゆるデバイスを非活性化し、ナノ・ロボットを分散させ、不動状態にさせられる」と説明する(写真、矢印はアタッシュケース)。

マックスは、学校の帰りに文房具店に寄る。そこで、彼が目を留めたのは6色入りのカラーペン。買いたいと思ってポケットからお金を出すと、出てきたにのは小銭だけ。思わず、「こんな予算じゃ、盗むしかないな」と呟く。その言葉を聞いた “透明なナノ・ロボット犬” の “目” には、「マックスが使った『盗む』という言葉の意味が表示される。「オンラインで検索: 盗難=所有物の違法な取得、社会=法による処罰、仏教=負のカルマ、キリスト教=地獄の業火で焼かれる」(1枚目の写真)〔なぜ、仏教とキリスト教があるのだろう?〕。マックスは、物欲しそうにカラーペンを手に持つが(2枚目の写真)、本来 悪人ではないので、盗む気はない。その時、別の棚に商品を並べていた店主がマックスに気付き、手に持って見ているだけなのに、「お前、盗む気か?」と、いきなり決めつける。その途端、赤い玉が数十個入った袋が床に落ち、マックスの方に歩いて行こうとした店主が、滑って転倒する(3枚目の写真)〔無実の者に罪を着せようとしたので、当然の報い〕。マックスは、ペンを棚に戻し、急いで店から逃げ出す。愚かな店主が、「泥棒!」と言って追いかけようとすると、ズボンのベルトが外れてパンツが剥き出しになる。その頃、街の中を走っていたアレックスの車では、ナノ・ロボットの位置が判明したというアラートが表示される。

マックスは、そのあと、昨夜壁に描いた犬を見に行く。すると、描いたはずの犬の絵は消え、代わりに白くなっている(1枚目の写真)。「変だな。誰かが上から塗ったに違いない」。すると、背後で、声がする。「なぜ、そんなことする? 芸術作品じゃないか」。マックスが慌てて振り返ると、ドラム缶の上に、自分が描いた犬が立体的になって乗っている。そして、「やあ〔Привіт〕」と言うと(2枚目の写真)、ドラム缶を降りる。それを見たマックスは、あまりのことに驚いて尻もちをつく(3枚目の写真)。「君の脳が 過剰なコルチゾールとアドレナリン〔人間がストレスを感じると、脳の視床下部から下垂体に向かってストレスホルモンCRFが分泌し、それに反応して副腎から分泌されるホルモン〕を出し、それが君の心拍数を上げるんだ」。マックス:「どっから来たんだ?」。「落ち着け。呼吸の練習から始めよう。僕に倣って…」。マックスは、悲鳴を上げて逃げ出す。ナノ・ロボットも後を追う。一方、アレックスは、先ほどマックスが寄った店に行き、監視カメラを見つけると、そこから簡単な遠隔操作で録画を腕輪に瞬間転送させる〔そんなことが可能なのだろうか?〕

マックスは、誰もついてきていないことを確かめ、外から自分の部屋に直接入り、ホッとしてベッドに横になる。すると、先ほどの声がして、「ところで、僕がどこから来たかについての 君の質問に対する最も正確な返答はこうだ。僕は、君がウォールペインティングで僕を描いた容器の中にいた」と言うが、ナノ・ロボットが話し始めるや否や、マックスはベッドから飛び出して、ベッドの陰に隠れる。話が終わると、「だけど、あれはタダの絵だったよ」と反論する。「違うな。僕は、ごく小さいナノ・ロボットで出来てるんだ。君は絵を描きたがってたから、僕は絵になった。ロボット犬を描きたがってたから、ロボット犬になった。僕は、クリエーターに仕えるようプログラムされている」。マックスは、「僕が君のクリエーター?」とびっくりする。「君が、僕を作ったんだ、マックス」。ここで、マックスは、学校での闘いのことを思い出す。「じゃあ、学校で闘った時、君は僕のバッグと一体化して上手に闘ったの?」(1枚目の写真)。「君の視床下部が自律神経に信号を送り、僕は、それを、『闘う願望』として解釈したんだ。だから、ちょっと助けたんだ」。「待って、じゃああの店で…」。「君が法による処罰や、負のカルマを受けたり、地獄の業火で焼かれるのを防ごうとした」。それに対し、マックスは、「君のせいで、ペンを取ってこれなかったし、ダンは二度と許してくれない」と、変なイチャモンをつける(2枚目の写真)〔盗みをしなくて済んだし、これからはロボット犬がマックスからは守ってくれるのに〕。そこに、母が入ってくる気配がしたので、「隠れろ」と命じる。ロボット犬は、「隠れるとは、僕の姿を誰にも見られないようにすることだ」と呟くと、「不可視モード、起動」と言い、足から順に消えていく(3枚目の写真)。マックスが部屋に戻ってくると、ロボット犬は消えていた〔「姿を現わせ」とでも言わないと、不可視モードは解除されない〕

マックスは、コンピュータをつける。見ているのは、レブラム・スタジオのサイト〔すべて英語なので、アメリカのサイトかも〕。「優勝者: レブラム・スタジオの有名なアーティスト、アダム・ジョーンズによる1年間の訓練コース」と書かれている。その下のページには、2位500ドル、3位200ドル。さらに、「提出期限5月6日。勝者発表5月24日」とも。それを見たマックスは、「今日が応募の最終日だ。どっちみち勝てないんだから、あきらめるか」と呟く。その頃、車に戻ったアレックスは、監視カメラの映像を再現するが、映っているのは店主が玉で転ぶ場面だけで、マックスはもちろん、ナノ・ロボットも映っていない。そんな時、アレックスの車では、ナノ・ロボットの位置が判明したというアラートが再度表示される〔ナノ・ロボットがどういう状態の時に感知されるのか全く分からない。可視、不可視にかかわらず、ずっと存在しているので、常時追跡可能なハズ〕。そのまま夜になり、マックスはベッドで寝てしまう。すると、ロボット犬は姿を現し、マックスの机に乗ると(2枚目の写真)、彼の描いたスケッチを1枚ずつ目のカメラで撮影。そして、応募画面にその画像をすべて転送する(3枚目の写真)。

翌朝、ゲコは、タグを描く連中がいそうな場所を周り、ロボット犬の絵に添えられていたサインを見せるが、誰も見たことがない。一方、マックスの部屋では、ロボット犬が ベッドに前脚をかけ、「マックス、遊ぼう。君は、犬が欲しかったんだろ? 子供と犬の伝統的な行動パターンを取らないと」と声をかける(1枚目の写真)。「情報を分析すると、公園で遊ぶのが最も人気があるみたいだ」。マックスは、「君、昨日、いなくなった…」。「不可視モードのことかい? 君が、『隠れろ』と言ったんじゃないか」。「一緒に公園に行きたいのか?」。「ああ」。「その恰好で? 自分の姿、見たことあるのか?」。「『お前、すごいぞ』と、言ったろ」。「すごいけど、そのままじゃな。本物の犬には とても見えない」。「分かったぞ。君は、僕が本物のフォックステリアのように見えて欲しい… だな?」。「その通り」。「いいとも」。「ホント? どうやるの?」。机の上に乗ったロボット犬は(2枚目の写真)、あっという間にフォックステリアに変身する(3枚目の写真)。「これなら、遊べるかい?」。「もちろん。だけど、皮ひもがいるな」。

マックスは、皮ひもで繋いだロボット犬を連れて 野原のような公園にでかける〔キーウの街は、市街地の中にも自然が多く残っているので、場所は特定できなかった〕。最初、ロボット犬が、平気で話しかけてきたので、マックスは 「人前でしゃべるんじゃない。心臓マヒで死んじゃうかも」と注意する。ロボット犬は、イヤホンをはめている人を見て、マックスの掌に、自分の一部を使ったイヤホンを1個出現させる(1枚目の写真)。「マックス、それはめて」。マックスが右耳に挿入すると、ロボット犬の声がそこから聞こえる。これで、ロボット犬→マックスへの意思疎通は100%可能となった。マックスが犬に話しかけても、それはよくあることなので、誰も気にしない。最初の頃、ロボット犬と他の犬との関係は良くなかったが、ロボット犬が 犬の臭いを発するようになると、犬同士で仲良くじゃれ合うこともできるようになる。マックスとロボット犬のコンビを一番良く示しているのが、2枚目の写真。車で公園内の道路に入ってきたアレックスは、犬に変身したナノ・ロボットを特定し、写真を撮る。そのうち、ロボット犬は、腰を下ろしてウンチを2つし、マックスに回収しろと言う。「君のウンチなんかに触るもんか」。「犬の飼い主の役目だろ?」。「袋を持ってない」。「手を使えよ」。「ヤだよ」。「本物じゃないんだ。ほら、取れよ」。マックスが拾おうとすると、2つともピョンと跳ねる。やっと1個捉まえることに成功。すると、目の前に、憧れのソーニャが。彼女は、マックスが飛び付いて拾ったものことを、「それ、何?」と訊く。ウンチでも、ナノ・ロボットの一部でも具合が悪いので、「大したモノじゃ…」と誤魔化す。ソーニャは、「何て可愛いの」と言い、膝をついてロボット犬を撫でる。「あなたの犬?」。「そうだよ」。「何て名なの?」。とっさに思いついた名が、フォックステリアから来たフォクスター。ソーニャと一緒に来た2人の女の子が、遠くから 「ソーニャ!」と叫ぶ。それを聞いたソーニャは、私たちアートプラットフォーム〔арт-платформу〕に行くの」(3枚目の写真)〔日本でアートプラットフォームと言うと、現代アートをサポートするプロジェクトを指す〕「じゃあね」。

彼女が去って行くと、フォクスターは、「マックス、ドーパミンが急上昇したぞ。セロトニンのレベルは幾何級数的に増加した」と冷やかす〔ドーパミンには、喜びや快楽をもたらす働きがある。セロトニンはドーパミンが過剰にならないように調節する〕。それを聞いたマックスは、「黙れ」と無視。それでも、フォクスターは続ける。「あの子が、好きなんだろ?」。「僕に勝ち目はない」。「お尻の臭いでも嗅いだらどうだい」〔犬の仕草から皮肉って言った〕。そして、真面目に、「なぜ、勝ち目がないと思うんだい?」と訊く。「彼女には、もうボーイフレンドがいて、それが何と、虐めっ子のダンなんだ」。「彼女、君に、アートプラットフォームに行くって話したろ。情報によると、そこは若い連中が集まって騒ぐ場所だ」。ここまで話したところで、アレックスは、フォクスターに向かってパルス・ニュートラライザーを向ける(1枚目の写真)。その直後、フォクスターは、マックスに寄り掛かるように飛び付くと、「アイディアがあるんだ」と言う(2枚目の写真)。フォクスターからマックスに送られる音声を、アレックスがどうやって感知したかは謎だが、それを “聞いた” アレックスは、ニュートラライザーを下げ、「アイディア?」と驚く。さらに、「信じられない」と呟くと、何でもできる腕輪に向かって自分の分析を録音する。「ナノ・ロボットは犬に変わった。それは、主人の願い通りの形態を取るようプログラムされているから。驚くべきは、主導しているのが犬で、少年ではないこと。人工知能モジュールが機能しているからに違いない」。これで、フォクスターは解体を免れた。

フォクスターは、マックスをアートプラットフォームに連れて行く。「ここで、何するんだ?」。「今に分かる。僕を信じて」。会場の奥では、ダンがストリートダンスをカッコ良く披露し、喝采を浴びている。フォクスターは、ダンのダンスをじっくり分析した上で、「マックス、何が女の子を魅了してるか分かったぞ」と言うと、「どこか人けのない場所に行かないと」と、嫌がるマックスを強引に引っ張って行く(1枚目の写真)。「君のヘアスタイルはマッシュルームカット〔坊ちゃん刈り〕だと知ってたか? 他にも問題は山ほどある」。倉庫のような場所にマックスを連れ込んだフォクスターは、パンツ以外は全部剥ぎ取り、新しい服を空中で回転させる(2枚目の写真)。そして、順番にカッコ良く着せて行く。ヤボったい眼鏡は吹っ飛び、目の視力を良くする〔これ以後、マックスはオシャレとしてのサングラスは別として、原則裸眼〕。さらに、カットバサミ・すきバサミが宙でせっせと動き、マックスのダサい髪形を変えていく(3枚目の写真)。最後に、青い色のサングラスに、カラフルなラフィア帽子を被せて変身完了。

そこからのマックス、というか、フォクスターに操られたマックスのパフォーマンスは、人間技とは思えない。最初の登場は、垂直壁画の上での一回転〔地上から見れば、頭から足先までが地面に並行なまま一回転〕。そして、そのままの状態で立ち止まり、右手を上げ(1枚目の写真、右から2番目はソーニャ)、上の足場にいる男性からスプレー缶を放ってもらう。そして、そのまま壁にしゃがみ込んで、黒のスプレーで線を描いていく。そして、1回転して木の床に降り立つと、自由自在にスプレーで線を描き、再び壁面に飛び移る。そこで軽くダンスをした上で、水平に一本黒い線を引いて行く(2枚目の写真)。観衆は興奮し、スマホで動画を撮る若者が続出。そこに現れたダンは、自分にとても勝ち目はないと思い、ふてくされて立ち去る。その後もパフォーマンスは続き、出来上がった作品は、ソーニャの絵(3枚目の写真)。友達から、「あれ、あんた?」と訊かれると、そこにマックスが割り込み、「やあ」と声をかける(4枚目の写真)。ソーニャは、微笑むと「嬉しいわ」と応じる。一方、ダンとその取り巻きがオープン・カフェでダベっていると、そこにゲコが寄って来て、例のサインを見せる。ダンがマックスの絵のサインなど知っているとは思えないのだが、ゲコにマックスの名前と住所を教える〔虐めの対象の住所なんか知っているハズがない〕

絵が終わった後、マックスとソーニャは、すごく楽しそうに座っている(1枚目の写真、もうサングラスも外している)。ソーニャは立ち上がると、「じゃあ…」と立ち去りかけ、「ところで…」と言って、バッグから “舞台練習の時に拾ったスケッチ” を取り出し、「あなたが描いたの?」と訊く(2枚目の写真)。マックスが、嫌われるかもと思って、恐る恐る 「そうだけど」と言うと、ソーニャは感激してマックスに抱き着く。それを見たソーニャの友達がびっくりすると(3枚目の写真)、ソーニャは いきなりマックスから離れ、「さよなら」と言って、2人と一緒に去って行く。フォクスターは、「あれが、有名な 『ハグ』 って奴だろ。確かな愛情表現とされている」とマックスを鼓舞する。それを “聞いた” アレックスは、腕輪に向かって、「ナノ・ロボット犬は、人助けができる」と吹き込む。そのあと、マックスがアパートに帰る途中で、ゲコが1人と1匹を見つけるシーンが短く入る。

念願叶ってアパートに戻ったマックスを待ち受けていたのは、隣の部屋での両親の会話。父:「彼に話しておくべきだと思う」。母:「あなたから話して。あなたの仕事の都合なんだから」。「マックスには、友だちなんかいないだろ」。それを聞いたマックスは、たまらずに部屋に入って行き(1枚目の写真)、「『友だちなんかいないだろ』って? 僕の意見も訊きもしないで。僕は何? 追加の荷物1個? 僕なんかどうだっていいんだ。2人で行けよ。僕は1人でここにいる」と強く反論する。そして、アパートから走って飛び出す。心配になった父が後を追う、外階段を走り降りる途中で、マックスは “フォクスターのうんち” を2個落としていき、ゲコがそれを回収する。マックスは外の道路に飛び出し、父だけでなく、母とフォクスターも後に続く。そして、マックスが車の前を無理に走り抜けた後、父の側面に、車がまともに衝突する(2枚目の写真)。母の悲鳴にマックスは振り返って、自分が仕出かしたことを見る。そして、ここから先がずるいのだが、その責任をフォクスターに転嫁する。状況を見ていたアレックスも、フォクスターは父親を救えたはずだと考える。一方、ナノ・ロボットの破片を確保したゲコは、ボスに会いに行く。ボスは、その見本を使ってナノ・ロボットを大量生産しようとするが、彼が雇った科学者は不可能だと言い、ボスはマックスを拉致するようゲコに命じる。救急車で母と一緒に病院に行ったマックスは、病院の廊下で一晩過ごし、朝になり、病院の前の芝生にいるフォクスターに気付く。そして、外に出て行くと、フォクスターを 「なぜ助けなかった?」と責める。「ちゃんと見てたぞ。君は、早く走ってたから、パパを道路から出すことだってできたはずだ」。「マックス、君は逃げたかったんだろ? だから、君を助けたんだ」(3枚目の写真)。「助けた? パパは病院なんだぞ。君は、友だちだと思ってた」。それだけ言うと、フォクスターのイヤホンを投げ捨てて病院に戻る。

マックスが病室に呼ばれる。父は幸い右腕と、左脚の骨折だけで済んだようで、脳や内臓に障害はなかったらしい。落ち込んだ顔のマックスを見た父は、「お前の方が、私より重い病気みたいだぞ」と冷やかす。マックスは、「僕のせいだ。僕はどっか変なんだ。絵ばっか描いて。パパが引っ越したいんなら、どこにでも行くよ」と100%の低姿勢(1枚目の写真)。それを聞いた母は、「あなたの方が正しいわ。ちゃんと相談すべきだった。もし、あなたが嫌なら、どこにも行かないわ」と言い、父も、「誰でも間違うことがある」と笑顔で言う。事故のお陰で、これまで仕事一本槍だった両親とマックスの間に絆が生まれた。マックスは、事態の好転を受けて、先ほどフォクスターに向かって下した一方的な非難を反省する。そして、フォクスターのところまで行くと、「なあ、フォクスター、『誰でも間違うことがある』」と、父の真似をする。そして、人間の考え方について説明する。「時として、人間は やりたくないことをする」と言い、フォクスターに説明を求められ、例として、「女の子の気を惹くために、わざと嫌いなフリをする」と言ったものだから、「人間は、論理性を欠いた変な生物だ」と見られてしまう。それでも、フォクスターは、「僕は君に従うように造られたんだ」と言う。マックスは、「違う。君は、自分で判断していいんだ」と教える(2枚目の写真)。そして、父の事故のケースでは、「僕が何て思っていようと、人の命の方がもっとずっと大切だ」とも。フォクスターが、その論理に納得すると、マックスとフォクスターは、ハイタッチで手と前脚を合わせる(3枚目の写真)。

その直後、ソーニャが病院の玄関から出てくる。マックスは、さっそく会いに行く、「病院で何してるの?」と訊くと、最高の返事がもらえる。「あなたのお父さんが事故に遭ったと聞いたから、来たのよ」。マックスが、「ありがとう。来てくれて幸せだよ」と言うと、ソーニャもにっこり。「ダンは一緒じゃないの?」。ソーニャは、「あのね、彼は、私がガールフレンドだって思い込んでるけど、あの人、頭悪いから」と言って笑う。そこに、BMWのスポーツカー i8〔約2300万円〕が乗りつけ、坊主頭の男が降りて来る。そのまま病院に入って行こうとしたので、マックスが、「ここに駐車しちゃいけないんだよ」と注意すると、男は、「なら、どかせよ、チビ助」と言うと(1枚目の写真)、そのまま中に入って行ってしまう。ソーニャは、「ハンドルを握ってるトコ、想像できる?」と、いわば唆す。それを聞いたフォクスターは、車の後部座席に入り込む。ソーニャは、窓から中を覗き、「地平線の彼方まで無限に伸びる高速道路を 2人だけで走るなんて想像できる?」と、さらに過激な発言。その時、フォクスターの一部の粒子がマックスの耳に飛び込み(2枚目の写真)、イヤホンに変化。「マックス、運転できると言えよ」とサジェストする。そして、ドアが跳ね上がり、中に乗るよう指示される。「彼女、気に入るぞ」。そこで、マックスは、「実は運転できるんだ」と言う。「それホント? でも、いいのかな?」。「だって、あいつ、『どかせ』って言ったろ」(3枚目の写真)。その頃までに、病院の駐車場には、最初から見張っているアレックスに加え、オートバイに乗ったゲコ、それに、ボスからゲコをつけるよう命じられた手下が乗ったジープが到着していた。そんな中、実質的にフォクスターが運転するBMWが発進する。

車は、街の中を通り抜ける時、散水車の横を通り抜け、貯まった水を道路脇にいたダンの一味に浴びせかける(1枚目の写真)。これが、虐めっ子ダンに対する、映画の中での唯一の制裁。車の中では、ソーニャが 「いつ運転を覚えたの?」と訊く(2枚目の写真)。「難しくも何ともないよ」。「あなたが、こんなにクールだなんて、思わなかった」。郊外に出て車がいなくなると、2人は車の中で上半身を使って踊り始める(3枚目の写真)。

BMWを追いかける3人のうち、アレックスは、手下のジープのナンバープレート情報を車内コンピュータに求め、「インターポール〔国際刑事警察機構〕が捜査中」との返答を得る。相手の1人は悪漢だ。一方、BMWの中では、バックミラーを見たマックスが(1枚目の写真、Aはアレックス、Bは手下、Cはゲコ)、後部座席のフォクスターに、「後続車がいる。先に行かせよう」と囁く。ちょうどその時、アレックスは。ジープの真横に来て、手下に向かってパルス・ニュートラライザーを起動する〔ナノ・ロボット用の装置が、ジープに有効なのか?〕。発射準備完了の数値が100%に達した時、先行するBMWが、“後続車を先に行かせる” ためブレーキを踏む。アレックスが慌ててブレーキを踏んだため、体が振り回され、パルス・ニュートラライザーは BMWを撃ってしまう(2枚目の写真)。煽りを食らったゲコはオートバイから投げ出されて路肩下に落下。エンジンが切れたBMWは、茂みに突っ込んで停止。マックスは、後部座席に向かって、「何やってる? 死にかけたんだぞ!」と怒鳴る。誰もいない空間に向かって怒鳴っていると思ったソーニャは、怖くなって車から外に出る。マックスは、「君が思ってるのと違うんだ」と弁解する。「イマジナリーフレンドと話してたんじゃないの?」。「違うよ、犬に怒鳴ってたんだ。実は、本物の犬じゃない。極秘のスーパー・ロボットなんだ」。アレックスの車も林の中に突っ込み、木が邪魔してドアが開かない。そんな状況下で、一番被害のなかった “手下” が2人の所にやってくると、身分証らしきものをサッと見せ、「警察の者だ」と嘘を言い、「免許証を見せてもらおうか。持っちゃいないと思うが」「この車は君のじゃないだろ?」と脅す。そして、「署まで同行を願おうか」と言い、強制的にジープまで連れて行く。マックスは、警察車両じゃないことを指摘するが、事ここに至っては、無理矢理乗せられるしかない(3枚目の写真)。ゲコは、何とか立ち直り、木の陰から拉致される2人を見ている。アレックスは、何とか車から脱出すると、BMWに駆け付ける。後部座席には、力尽きたフォクスターが残っていた。そして、「緊急モード起動」と言うが、活力は落ちている(4枚目の写真)。アレックスは、「心配しないで。私は友達よ」と声をかける。「事故を起こすつもりじゃなかった。あなたを追跡してる連中を遅らせようとしたの」と説明する。「あなたは誰?」。「あなたの生みの親よ」。「あいつ、マックスとソーニャを連れてった。僕には、助けられない。ナノ分子の結合がとても弱くなってる。あなたに助けてもらわないと」。アレックスは、追跡できないと断るが、フォクスターは、マックスのイヤホンが 自分の一部なので追跡可能だと示唆する。

2人は ボスのオフィスまで連れて行かれ、ボスの前に引き出される。ボス:「犬はどこだ?」。マックス:「ソーニャを解放しろ」。「叶わんな」。「僕のノミだらけの犬に何の用だ?」。「お前には関係ない」(1枚目の写真)。「あいつなら、病院に置いて来た」。「わしは、あいつをつかんだら、4本の脚、しっぽ、耳と順番に引きちぎり、バラバラにしてやる! もはや犬だったとは分からんまでにな。そして、ナノ・ロボットを使って世界を征服してやる。ナポレオンにように」。ボスは、それだけ言うと、手下に命じて2人を金網で作られた檻の中に投げ込む(2枚目の写真)。そして、「もし、犬が病院にいなかったら… 見つかることを祈るんだな」と脅す。そして、マックスのイヤホンを取り上げる。イヤホンを手に入れたことで、手下はアレックスとフォクスターの会話を自由に聞くことができるようになる。フォクスター:「子供たちは中にいる。警察に知らせるべきだ。僕らだけでの救出は無理だ」。アレックス:「分かった、あなたが見たものすべてを記録しておき、警察に知らせるわ」。これで、手下は、ナノ・ロボットが病院ではなく、女性と一緒にビルの前にいると知ってしまう。一方、檻の中では、マックスが、ソーニャに、「僕、嘘ついた。フォクスターは車の中にいた。病院じゃない」と打ち明ける。「フォクスターって、あいつらが話してたロボットなの?」。「姿を見えなくすることができるんだ」。「じゃあ、あなたが車の中で怒鳴ってた相手は、そのロボットなのね? でも、そんなこと可能なの?」。「僕は、ナノ・ロボットだと思ってる」。「車の運転もできるの?」。「そうさ。運転してたのはあいつで、僕じゃない。僕はクールじゃない。落ちこぼれだ」。「そんなことないわ」(3枚目の写真)「あの男に、あんな風に立ち向かえるなんて、あなたってホントに勇気あるのね」。これで、マックスは、面目を保つことができた。

ゲコは、こっそりビルに入って行く。それを見たアレックスは、透明になったフォクスターに後を追わせる。ところが、そのアレックスを手下が車から拉致する。ゲコが 檻の前まで潜入した時、そこにフォクスターがやってくる。すぐにやって来た手下の命令で2人はフォクスターを捉まえようとするが、透明になったフォクスターはロープを巧みに操って2人を翻弄する。そして、見るに見かねた手下が加勢に加わると、フォクスターは 3人揃って檻に誘い込み、マックスとソーニャを逃がし、手下に連れて来られていたアレックスが すぐに扉を閉める。これで形勢逆転かと思えたが、秘宝インペリアル・イースター・エッグ〔ロシア皇帝アレクサンドル3世、ニコライ2世に納められたイースター・エッグ50個〕を入れてある特殊なガラス容器をつかんだボスは、その中に、フォクスターを閉じ込める〔この容器の中では、なぜか、ナノ・ロボットが作動しなくなる〕。これで形勢は再逆転。ボスは檻から3人の部下を出し、高層ビルの床から天井までの窓を全開にすると、「どうしてナノ・ロボットは、ガキの命令なしで形を変えられる?」とアレックスに訊く。「所有者のコードフラグメント〔一種の並列処理システム〕を使うからよ。もし、ナノ・ロボットを従わせたいのなら、優秀なハッカーに、全てのコードを書き換えさせないと。時間がかかるわよ」。ボスは、「お前がやれ」とアレックスに命じる。アレックスが拒否すると、ソーニャを窓の所まで連れて行き、いきなり抱えて、窓の外に出し、3からカウント・ダウンを開始する(1枚目の写真)。相手がキチガイなので、アレックスは仕方なく折れる。そして、全員を研究室に連れて行くが、その時、ガラス容器に入ったフォクスターの乗った台車を押しているゲコは、並んで歩いているアレックスに、「フォクスターを奴らに渡す訳にはいかない」と囁く。「奴らは、想像を絶することをやろうとしてる」。それを聞いたアレックスは、「打つ手はある。でも、手伝って」と囁く。研究室に着くと、アレックスは操作パネルを起動し、「どんなロボットにしたらいい? 何をさせたいの?」と訊く。「阻止不能のコンピュータ・ウィルス」。そのあと、ボスは、無謀な夢を自慢げに語る(2枚目の写真)。ボスの一連の発言を、ゲコは、警察のチャット上で、動画としてスマホで録画し、それを送信する。アレックスは、ガラス容器が邪魔で操作ができないと言い、容器を外させる。その直後、ゲコは、金属容器でコンピュータを破壊する(3枚目の写真)。すると、なぜかフォクスター以外の時間が停止し、その間に、フォクスターはボスと手下を動けないようにする。

フォクスターは、「ここに来て」と、マックスを自分の目に前に呼ぶ。そして、「君は、僕に、『自分で判断していい』と言ったの 覚えてるか?」(1枚目の写真)「僕は、このサイコパスに仕える武器にはなりたくない。だが、それには君の助けが要る。マックス、君は、僕に、解体を命じないといけない」。「解体するの? そんなことできないよ。そしたら、もう僕のフォクスターじゃなくなっちゃう」。「僕は、いつだって君と一緒だ。僕を作ったのは君なんだから。強くなれ、マックス。これからも一緒だ。約束する」。「ごめんね… “解体”」(2枚目の写真)。この命令で、フォクスターは、これまでの不可視化と違い、ナノ分子に戻っていく(3枚目の写真)。解体と同時に、2人の悪漢を拘束していたフォクスターの一部も消える。手下は、コンピュータを破壊したゲコを捉まえるが、彼は、さっきボスが話した時のビデオを既に警察に送ってあるから、すぐに警察がやってくると警告する。ボスは、手下に、すぐ脱出用のヘリを呼ぶよう命じる。

あくまでも卑劣なボスは、もう一度ソーニャを捉まえると、屋上に向かう。そして、ビルの端に立つ(1枚目の写真、すぐ下に街路が見える)〔何のため? 縄梯子を降ろさせ、ソーニャに先に行かせるのだろうが、こんな危険な場所に立つ必要はない〕。マックスが、「彼女を離せ!」と叫ぶと、ボスは、「欲しいか? なら やろう!」と言うと、ソーニャを思い切り投げて、ビルの一段と高い壁にあるフックに引っ掛ける。フックから外れれば、地上まで真っ逆さまだ。最大の危機に瀕したマックスの周囲にナノ・ロボットの粒子が集まってくる(2枚目の写真)。そして、声が響く。「行け、マックス。君は宇宙のヒーローだ。忘れるな。僕はいつも君と一緒にいる」。粒子がマックスの体内に入り込むと、マックスの視野がフォクスターの目と同じようになる。まず、ソーニャを見ると、「風速8.19 m /秒、地上からの高さ33.17m、体重47.50kg、彼女まで距離16.50m」、赤字で「落下まで64秒」と大きく表示される。彼女を救うまでに、ボスをやっつける時間は十分にある。そこで、マックスはボスに向かっていくと、左脚につかまって半周し(3枚目の写真)、途中で手を放すと、左足でボスの右脚をキック。ボスは、屋上に吹っ飛ばされる。そして、起き上がったボスの脇腹に強烈な一発(4枚目の写真)。さらに、相手の左パンチを左手で簡単に受け止め、ボスの顔に強烈な右パンチ。この時点で、墜落までの時間は46秒。その後も、怪物のような相手との激闘は続くが、最後は、正面からぶつかり合い、直前にマックスが飛び上がって、左足でボスの顔を蹴り、2人は宙に舞う(5枚目の写真)。正直言って、特撮はなかなかのものだ。これでゲーム・オーバー。残り時間14秒。マックスは、最後に一発パンチを喰らわせ、完全にノックアウトさせると…

そのまま、残り時間7秒のソーニャ向かって飛び、5メートル下の壁面に立ち、落ちてくるソーニャを待ち構える(1枚目の写真、矢印はソーニャの落下方向)。そして、無事に受け止める(2枚目の写真)。ソーニャの右手はマックスに対する全面的な信頼の象徴だ。壁面から屋上に連れて来られたソーニャは、「私のヒーロー」と讃える〔アメリカ映画なら、キスするのに…〕。その直後、屋上には駆け付けた警官隊が押し寄せ、ボスは拘束される。それまでマックスを助けていたナノ・ロボットの粒子は、アレックスが持参した円筒状のケースに戻る。そこまではいいのだが、非常に不自然なのは、ボスと手下が建物から連行されて行く時、辺りは明るくなっている〔さっきまで真夜中〕。2人は、救急車に腰かけ、毛布で包(くる)まれているマックスとソーニャの脇を通って行く(3枚目の写真)。深夜→早朝までの間には最短でも3時間以上はあるだろうから、マックスたちはこんな姿でずっと座らせられていたことになる〔?〕。ソーニャ、マックスの順で、両親、母に引き取られていった後、アレックスがゲコに、セキュリティの強化に対する協力を要請する。

それから1ヶ月以上後になり、父は、もう退院している。アパートの玄関のドアベルが鳴り、マックスがドアを開けると、マックス宛の書留郵便が届く。封を開くと、中から出てきた紙は、レブラム・コミック・グループからのもので、アドレスはニューヨークになっている。それなのに、下の文章は英語とウクナイナ語で書かれている。内容は、コミック・アート・コンテストに優勝したので、アート・スクールでの1年間の教育資金を受けることになったというもの。フォクスターが応募しておいてくれた結果だ。マックスは、すぐに朗報を両親に伝える。両親は快挙を称えた後で、予め用意しておいたプレゼントの箱を見せる(2枚目の写真)。マックスが蓋を取ると、中には子犬が入っていた(3枚目の写真)。今まで禁止されていた犬を飼えることになった理由として、母は、「街で最悪の犯罪者を倒せたんだから、犬を飼える責任は十分あると思ったの」と言い、父は、「どんな名前にする?」と訊く。マックスは、「フォクスター」と答える。マックスは新しいフォクスターを連れて公園に行く。そこにはソーニャもいる(4枚目の写真)。2人が仲良く犬を連れて散歩するところで映画は終わるのだが、アート・スクールはどうなるのだろう? このスクールが奇跡的にキーウにでもない限り、マックスは、一人でニューヨークに行き、ソーニャとも別れなければならない。そこら辺のところは、テキトーに誤魔化してしまった感じ。

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